【スポーツを読む】第26回 栗山英樹『栗山ノート2 世界一への軌跡』光文社(2024年)
「人間は一生のうちに逢うべき人には必ず逢える。しかも、一瞬早すぎず、一瞬遅すぎないときに」。これは2023年の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本を3大会ぶり3度目の優勝へと導いた栗山英樹監督の言葉である。

本書は栗山監督によるWBCの回想録である。代表監督就任前からつけていた野球ノートがその基になっており、野球のことだけではなく、先人が残した言葉や、中国の古典に至るまでが記されている。そこには普遍的な価値観があり、WBCを巡るリアルなエピソードもある。
大会を重ねるにつれ各国のメンバーに一流選手が並ぶようになり、日本もメジャーリーガーの招集が勝利のために必須条件となった。その中で栗山監督が目を付けたのがラーズ・ヌートバーである。アメリカ人の父と日本人の母を持ち、WBCの規定では日本代表として出場可能な選手だ。
ヌートバーに日本プロ野球でのプレー歴はなく、チームに馴染めるかを栗山監督は心配していたという。まずはヌートバーとオンラインで面談することになった。そして、すぐに日本のファンにも受け入れられると確信した。それが冒頭で紹介した言葉の「逢うべき人」だと実感した瞬間だった。
その後のヌートバーの活躍は野球ファンなら誰もが知っている。ヌートバーに目を付けた眼力はもちろん、短時間で信頼関係を構築する力は栗山監督ならではだろう。
私は小学生の時から高校まで8年間野球をプレーした。そして私にも「逢うべき人」がいたことを、本書を通じてあらためて感じた。
顧問であり担任でもあった先生が「自立、自律、時立」という言葉を掲げて生徒に接していた。そのモットーの下で、私の野球に取り組む意識が変わった。
プレーを離れたルールがいくつかあった。練習後は毎日ユニホームを自分で洗う。グループラインのノート機能を利用して練習や試合がある日は毎日反省を書く。
また朝の自主練習も行っていた。練習に対してどのような意識で取り組むかで、上達のスピードが変わると伝えられ、とにかく自主性を磨くという方針の下で育てられた。1年生のころは大変だったが徐々に慣れ、ルールはいつしか当たり前の習慣に変わっていった。
現在の、そして将来の自分にも、ものすごく財産となった高校3年間だったと素直に感じている。人との出会いについての栗山監督の言葉を読んで高校時代を思い出し、初心に帰ることができた。
(江戸川大学マスコミ学科、大塚空流)





