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【スポーツを読む】第21回 福澤達哉『試合が100倍おもしろくなる! バレーボール観戦マニュアル』KADOKAWA(2025年)

 バレーボールにハマったのは高校生の頃だった。ダイナミックな動きに「かっこいい」と圧倒されたけれど、何がすごいのか言葉にするのは難しかった。本書は、帯に「『かっこいい・ヤバイ』だけで語るのはもったいない!」と書いてあるように、プレー経験がなくても観戦好きな私のようなファンのニーズに応え、バレーボールの何がすごいのかを教えてくれる。


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 本書を一言で表すなら、元日本代表の福澤達哉が素人のために分かりやすく語る技術と戦術の解説書だ。例えばサーブの章を読めば、ジャンプサーブのトスがいかに大切でかつ難しいかが分かる。高いトスを上げればメリットが大きいが、自分がジャンプするところに高く正確なトスを上げ続けるのはとてつもなく難しい。やってみたことはあるが、高いほど正確な位置にボールは落ちてこない。

ここでは語りきれないが、サーブだけでも様々な種類や戦術があり、だからこそ見応えがある。第1章で取り上げられている西田有志選手は、私が好きな選手である。2019年ワールドカップでのカナダ戦で、19歳だった西田選手がジャンプサーブを武器に、第5セットに6連続得点を演出したエピソードが紹介されている。サーブは勝敗の6割近くに影響するという。本書を読んだら、決まった時だけでなく、簡単に返された際に何が原因だったのかを考えることも面白くなるだろう。

 もちろん本書が取り上げているのは、サーブだけではない。第2章以降は、レシーブ、トス、アタック、ブロックそれぞれに1章ずつ割いて詳細に語っている。サーブレシーブは基本的に2、3人で行うのだが、強烈なジャンプサーブが増えた最近では4人体制が主流になりつつあるらしい。私が忘れられないのは、2023年のネーションズリーグのチュニジア戦で、西田選手のサーブに苦戦するチュニジアが5人でサーブレシーブをしていたことだ。衝撃だった。

 本書を読んだことでアニメ『ハイキュー!』のセリフの意味が分かったということもあった。「スパイカーの前の壁を切り開く、そのためのセッター」という影山の言葉を聞いた時は特別何も思わなかった。でも今は、セッターが相手に悟られず、ブロックを分断してスパイカーが打てるようにしているのだと分かる。

 バレーボールにおいて身長が大きな武器であることは、バレーに詳しくない人でも分かるだろう。世界標準で日本は小柄な選手が多く、平均身長で10センチ以上差があることも珍しくない。ただそれでも対等に戦えている。日本が低迷を脱してトップレベルとなった理由の一端が分かる本でもある。

(江戸川大学マスコミ学科、竹森公紀)

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