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執筆者の写真流山ラグビークラブ

【スポーツを読む】第17回  達川光男『広島力』講談社(2019年)


 広島カープのキャンプを見に訪れた宮崎県日南市で出会いがあった。立ち寄った場外舟券場でカープOBの達川光男さんと目が合ったのだ。小学3年から応援しているカープの名捕手で元監督が、私ににっこり微笑みかけてくれた。「サインよろしいですか」と声を掛けると、達川さんはサインを書きながら「ここでトークショーがあるからボートレースのことを知るために来たんじゃけど、全く分からん。教えてほしい」と頼んできた。

 ボートレースは好きなので、達川さんに一から説明すると「めちゃくちゃ詳しいな」と言われた。「師匠」と呼ばれ、そのまま食事に誘われご馳走になった。2024年2月5日のことだ。結局3日連続で食事に連れていってもらった。

 

 この出来事がきっかけで私は達川さんをもっと知りたくなり、本書を手に取った。春のセンバツ準優勝、夏の甲子園優勝を成し遂げた広島商高時代や、大学時代に受けた教え。プロ生活と、引退後の指導者生活までが細かに書かれている。

 

 最も印象に残っているのが、カープのスカウトについて書かれた第5章である。一目見て良い選手だと分からなくても、我慢して見続けることでその選手の良さが分かる。あるいは逆に良いと言われている選手のいい加減な部分が見えたりするということだ。一般社会においても、同じだろう。決して強打者ではなかった達川さんも、そうやってカープに地力を認められた。この章は、達川さんの大事なメッセージである

ように感じた。

 

 達川さんが誕生日の7月13日に東京ドームで解説の仕事があると知ったので、この本とプレゼントを持って会いに行った。声を掛けると「おい師匠、何しよるんや~」と相変わらずの広島弁で返され、本にサインをしてくれた。それが写真の本である。

 今でも達川さんには食事に連れて行ってもらうなどお世話になっている。本書を繰り返し読み、書かれていることについて教えてもらった。インターネットばかりで何年も紙の本を読んでいなかった私にとって、かけがえのない1冊で、あらためて手に取り、重みを感じている。


 広島が生んだカープのレジェンドであり、私の尊敬する人であり、大好きな人であり、最高の〝愛弟子〟の書いた本を一人でも多くの人に読んでもらいたい。


(江戸川大学マスコミ学科、開原健太)

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